2012年3月30日金曜日

どうすればいいの?


どうすればいいの?

糖尿病は、近い将来合併症が襲ってくる可能性があると言うことは、既に何がこわいの?のページで
理解していただいたと思います。
では、どうしたら良いのでしょうか?ここではそう言った疑問に一つ一つお答えしていきます。

知りたい項目をクリックして進んでください。このページは、理解していただくため文章が長く
なっていますが、がんばって読んでください。順番に見ていただくことをお奨めいたします。

 

はじめに(必ず読んでください)

何度も述べたことですが、糖尿病の治療の本当の目的は、その恐ろしい合併症を防ぐことにありま
す。風邪で熱が出ているからお医者さんに診てもらうとか、胃が痛いから診てもらうと言った、直接
その症状を取り去るための治療ではありません。糖尿病自体、ほとんど症状がないことは、お話しし
ました。見えない相手を敵に闘うとき最も大切なことは、まず相手、つまり糖尿病そのものをよく理解
することです。

以前「糖尿病によく効く○○スープ」と言って、販売していた業者が逮捕されました。患者さんの"良く
なりたい"の思いを利用した犯罪でしたが、よく似た話はたくさんあります。日向のかぼちゃは、糖尿病
に良いと聞き、かぼちゃ料理ばかり食べていた人がみえました。かぼちゃは、糖尿病の食品交換表で
は、ごはん類と同じですから当然いつも高血糖状態。効くどころかむしろ悪化させていたわけです。
また糖尿病では、ビールはダメでも、ウイスキーは飲んでも良いと聞き、この為血糖コントロールが
狂った人もみえます。お酒類は、アルコール濃度に比例してカロリーが増えることは知っていたはず
の人でした。

栄養師さんのページ

栄養士さんのページで取り上げられると思いますが、避けるべき食べ物や飲み物はありますが、決し
て口にしてはいけない食べ物はありません。それだけに、正しく食事療法を行うことは、大変ですが、
食事療法なしに糖尿病は克服できません。食事療法なしの治療を誰もが望みますが、食事療法が
避けて通れないことを認識し、逆に食事療法を行いつつ食事を楽しむようになっていただきたいのです。

また、「糖尿病が治った!」などと言う宣伝で出回るような、安易な治療法などありません。もしあるの
なら、医師が取り入れないはずがありません。ですからこのホームページや主治医の先生、また糖尿
病教室などで教えられた事を信じて、じっくりと糖尿病に取り組んで下さい。そして、誰よりも糖尿病の
ことを理解して下さい。関係ある内容については、どん欲に知識を吸収するよう努めて下さい。それが
正しい糖尿病の治療の一つであり、前向きの姿勢を維持するコツだと私は考えています。

そこで、まず皆さまにお願いがあります。

以下を声に出して、実行していただきたいのです。

  • 私は、糖尿病を理解し、克服して合併症にはならないぞ!

  • 食事療法をいつも心がけ、今食べてしまっても、次はがんばるぞ!

  • 状態把握のために月に一回は受診して検査をしてもらうぞ!

  • 糖尿病は恥ずかしくないが、コントロールできないことは恥ずかしいと思うぞ!

 

戻る

どうして食事療法が必要なのか?

どうして、食事療法が必要なのでしょうか? 「食べ過ぎたら、血糖値が高くなるからでしょう!」皆さん
そう言われます。確かに食べ過ぎると血糖値が上がりますが、その裏で起こっている事を考えていただ
きたいのです。耐糖能のページで、インスリンの話をしました。糖尿病すなわち耐糖能に異常のある人
は、インスリンの分泌不全か、量の不足か、作用不全であると言いました。(もう一度読んでみて下さい)

仮に、今インスリンの分泌の悪い糖尿病患者さんがいたとしましょう。(多くは、このタイプです) わずか
15分の間に朝食に800カロリーの物を食べ、これが吸収されると、どんどん血糖値が上がっていきます。
しかし、インスリンはまだ分泌されません。
・30分経ちました。しかしインスリンはまだ分泌されません。
・1時間経ちました。ようやくわずかにインスリンが分泌されましたが、まだ高血糖が続きます。
・2時間経ちました。ようやく少しづつインスリンが分泌され、血糖がわずかに下がりましたが、まだ依然
として高値です。
・3時間が経ちました。徐々に血糖値が下がり始めました。
・4時間経ちました。ようやく血糖値が下がったかな?と言うところまで来ましたが、残念ながらここで、
次の昼食の時間となりました。そして再び血糖が上昇するのです。
 (下の図は、一日の血糖の変化の一例です。)

つまり、インスリンの分泌が遅れる間不必要に高血糖状態が続いてしまうのです。 もし、この時その
人にとって必要最低限のカロリーのみを食べたとすると、血糖の上昇は少なく、また遅れて分泌された
インスリンによってもう少し早期に血糖値は下がるのです。

そして大切なことは、正しい食事療法の食生活習慣を続けることによって、インスリンの分泌不全が
多少なりとも改善
されると言うことです。逆に食事療法を行わずにいると、ますますインスリン分泌不全
は増悪し、俗に「糖尿病の程度が悪化した」と言う状態になります。


どのようにケリーリパは、重量を失った?

また、薬物療法を行うにおいても、毎日の食事が不規則ですと、薬物による一定した血糖値へのコント
ロールが困難で、時に低血糖を生じたりする危険性があります。(同じ薬の作用で、昨日は3000カロリー
を食べ、今日は1000カロリーなら、血糖値も異なってくるはず)

このように、食事療法は糖尿病の血糖コントロールにおいて、基本となる治療なのです。

食事療法の考え方

"糖尿病の人は、甘い物を食べれない"そう信じている人が多いようです。私の患者さんでも、「先生、一つ
でいいから、大福を食べたい」と言われた方がみえます。「大丈夫ですよ、その分のカロリーをどこかで、
ひかえましょう。」そう言うと「えっ、甘い物を食べてもいいのですか?」と驚いてみえました。栄養指導を
受けられ、今はその時の事を笑って話せますが、案外そう思ってみえる方が多いようです。

糖尿病の食事療法を簡単に言うと、
その人の性、年齢、標準体重、生活状態などを考慮した必要最低限のカロリーを各種栄養素を
バランス良く、その人の生活時間あわせて摂取する。

となります。わかりにくいですが、性や年齢によって必要なカロリーが異なることは理解できると思います。
標準体重とは、以前は(身長cm-100)×0.9の式を用いていましたが、最近は肥満指数より求める式が
一般的です。
標準体重=22×(身長m)×(身長m)  (22×身長の二乗mです)
(22は肥満指数の標準であり、通常21-24が正常で、25以上なら肥満、19以下なら痩せとなります。)
そしてその標準体重1kgあたりの一日の摂取カロリーを決めます。この時、生活状態が考慮されます。
運動選手と事務職員では必要とするカロリーが異なるからです。
仮に標準体重60kgの人で事務職であれば、60kg×30カロリー=1,800カロリー となりますが、運動選手
ですと60kg×45カロリー=2700カロリーとなります。
(注意!実際には、他の要素を取り入れることも多いので、主治医にお尋ね下さい。)

そしてその上で、生活時間にあわせて、栄養素もバランス良く食べるわけです。
(詳細は栄養師さんのページに譲ります。)

しかし、以下のことを理解してください。
決められた食事を100%守ることは、不可能であるという事を、少なくとも私たち「がんばって!
糖尿病」のスタッフは、理解している
という事です。ケーキが食べたいときもあります。お付き合いで
飲むこともあります。それは、十分わかった上で、指導しているのです。
私たちが一番恐れている患者さんは、まったく食事療法を理解しようとせず、興味も示さず、
食事療法の大切さを認識しない人
です。少なくとも食事療法がどうして大切で、必要なのかが判って
いれば、全く意識せずに食事を続けることなどできないはずです。

糖尿病は、超慢性疾患です。数分後や数時間いや数日後に急に変わるものではありません。
(但し低血糖など一部の合併症は除く)ですから治療である食事も、
今すぐ100%を目指すより、いつも安定して80%以上を維持することをお奨めいたします。

食事療法なしに糖尿病は克服できない。 この事を理解された上で、食事療法に取り組んでいただけ
れば、栄養士さんからいろんな食生活上のアドバイスを吸収し、糖尿病の食事療法と楽しくつきあって
行けるようになると思います。

 

運動の意味

糖尿病患者さんが、運動療法に対して誤解をされていることがあります。それは、摂取したカロリー
を運動で消費するといった考えです。例えば、「ショートケーキを一つ食べたので、その分のカロリー
運動しなくては!」と言ったものです。しかしこの考えは間違いと言ってよいでしょう。確かにカロリー
を消費する(使ってしまう)と言う目的もありますが、本当の目的はそうではありません。仮にショート
ケーキ一個およそ400カロリーと考えると、なわ跳びで消費するためには、約30分強の間跳んでいな
くてはなりません。軽いジョッギングでしたらおよそ1時間近く走っていただかなくてはなりません。
実際問題摂取したカロリー全てを運動で消費することは、不可能なのです。

それでは、運動療法の本当の目的は何でしょう?

簡単に述べると、インスリンの作用効果を高めると言ったところです。つまり、#運動療法を続けること
によって、インスリンが働き者に変身するわけです。それまで、血糖値を10mg/dlしか低下させなかった
インスリンの量で、20mg/dl低下するようになるのです。
(#実際には、組織細胞のインスリン感受性が高まる)

その他にも、カロリーを消費する、新陳代謝を活発にする、筋力を維持する、精神的効果などがあります。  

 

運動療法の実際

よく男性の方は、ゴルフに行ったので運動しました。と言われます。確かにゴルフも運動ですが、
あまり運動療法に向いた運動とは言えません。「私がゴルフに行くと、運動療法になりますが、あなた
では無理でしょう。」とゴルフが上手な方に敬意を表して世辞を言います。と言うのも、私はゴルフに
あまり興味もなく、たまに連れて行ってもらっても、110から130位のスコアーです。しかも迷惑をかけま
いと、二〜三本のクラブを握り、右から左へとかけずり廻らなくてはなりません。その間、上手な方々は、
雑談しつつほぼ直線に、ボールの所へ向かい、再び打っては歩く・・と言った具合です。上手な方では
あまりに運動療法に適しているとは言えないのです。またゴルフのバッテイング練習は無酸素運動
(息をせずにする)ですから、これも運動療法に適しているとは言えません。唯一ゴルフで良いのは
ウオーキングすることでしょう。

つまり、糖尿病の運動療法として、理想的な運動とは、次のようなものなのです。

有酸素運動であり、全身運動が好ましく、できる限りエアロビクスゾーン(最大酸素摂取域)で
あること。そして、短くとも20分以上、できれば30分以上持続する。一週間に4〜5回以上は行う。
と言ったことが大切なのです。


どのように多くのカロリーは一日が必要です

エアロビクスゾーン(最大酸素摂取域)は、個人差があります。しかしおよそ中年以降の方であれば脈拍
が120〜130回/分になるような運動と考えれば良いでしょう。早足から軽いジョギング程度の運動です。
もっと簡単に運動の強度を指示するなら、話ができるくらいの運動です。ぜーぜーと話せないほどの運動
は逆効果です。そしてこれを20分以上できれば30分くらい続けるのです。

しかしここで大切なことは、楽しんで始めないと続けにくいと言うことです。スイミングスクールで仲間と一緒
にゆっくりと泳げるなんて言うのは最高です。また会話を楽しみながら、ウオーキングやジョギングも良い
でしょう。また主婦の方であれば、NHKなどで午後に放送している体操を一緒にされるのも良いでしょう。
また通勤に自転車を利用されるのも一つの方法です。大切なことは、続けることです。

私の患者さんで、通勤のバスを、二つ前のバス停で降りて、およそ30分歩くようにされた方がみえます
が、一ヶ月後の血糖値の改善に主治医ともども驚いた記憶があります。

運動療法をする時の注意

では、さっそく今から運動しよう・・・その前に次のような点を注意して下さい。まずは、主治医の先生と
運動療法について相談してみて下さい。「運動なんか、効果がないから・・やめておいたら?」などと言う
先生がみえたら、一度主治医を考え直すべきかもしれませんが、大抵の先生は、運動処方をしてくれる
と思います。しかし中には、運動療法をしてはいけないと、注意される場合もあります。そう言った場合は、
なぜいけないのか尋ねましょう。多くの場合次のような理由です。

・血糖値の変動が激しく、安定していないため低血糖を生じる恐れがある。

・新たな治療を始めたばかりで、血糖値に影響を及ぼす変化を始めるべきでない。

・糖尿病性の合併症を生じており、運動そのものがリスクとなる場合。
  (糖尿病性網膜症や腎症、狭心症や心筋梗塞など)

他にも、主治医の先生が意図して運動療法をさせない場合もありますので、必ず相談してから
始める
ようにしましょう。

 

薬は最後の手段

健康診断で、糖尿病を指摘され治療にみえた方で、「糖尿病が治る薬をちょうだい」とあっさり言われる
方がみえます。もしそんな良いものがあれば、とっくに皆さんに処方していますし、学会でも注目を集めます。
最近は遺伝子治療での報告がされ、今後糖尿病が治る日も近いかもしれませんが、少なくともまだ
数十年はかかります。残念ながら糖尿病が治る薬は、現在はありません。

現在糖尿病の薬として用いられているのは、インスリン製剤を始めほんの数種類です。しかも大切なこと
は、全て食事療法や運動療法と言った生活習慣による治療においても十分効果が得られないときに用いる
と言うことです。(インスリン依存性糖尿病などは除く)そしてどの薬も、糖尿病を治すのではなく、血糖値を
コントロールするために用いられているのです。血糖値をコントロールするためには、食事療法、そして運動
療法があり、それでも十分なコントロールが得られないときに薬を用います。つまり、薬は、血糖コントロール
の最後の手段と言うことです。

(戻る)

 

薬の種類

薬剤は製薬上の規定から実名は避けています。またここでは、一般の方にわかりやすいように説明しております
ので、本来の医学的病態的用語と異なります。また薬剤に関する情報では、全てを記載しておりません。使用に
関しては必ず主治医と相談し、処方していただいて下さい。その旨ご了解下さい。

詳しくは、薬局のお姉さんからのお話で紹介されますが、ここでは、医師がどのようにお薬を用いているのか
を紹介しつつ、お薬の種類を説明いたします。
(インスリンの分泌の話の知識が必要ですので、耐糖能の項目を読まれてから見て下さい。)

大きく分けて薬には4種類現在存在します。インスリン製剤、経口血糖降下剤、食後過血糖改善剤、そして
インスリンの抵抗性を改善する作用のお薬の4種類です。医師は、これらをその患者さんの病態にあわせて
使用します。例えば、インスリンの分泌はあっても、食後にすぐ分泌されないようなタイプの人には、経口
血糖降下剤を用いることが多いです。

(傾向血糖降下剤)
血糖降下剤とは、膵臓のインスリを分泌する細胞に働きかけて、インスリンを出すように刺激する薬です。
基礎分泌を刺激する働きが強かったのですが、近年追加分泌を刺激するものも登場しています。

(食後過血糖改善剤)
また、肥満傾向で食後などに特に血糖の上昇が激しい場合などは、食後過血糖改善剤を処方します。
これは、現代人は食事をするとその大半が小腸の上部で既に吸収されてしまうため、急激に血糖の上昇
が生じることから、小腸の糖分を吸収する細胞をある程度ブロックする事によって、小腸全体で吸収させ
急激な血糖の上昇を防ぐと言ったものです。服用初期のお腹の膨満感やおならの副作用があります。

(インスリン抵抗性改善剤)
発売当初に、副作用報告され、一時使用されていませんでしたが、最近は新しいものも出現し、また
経口血糖降下剤の中で、この作用を併せ持つものも再び使用されるようになっています。分泌された
インスリンの感受性を高める事によって、インスリン本来の働きをさせることで、血糖の改善を目指す薬
です。

(インスリン製剤)
そして不足しているインスリンそのものを補うのがインスリンです。このインスリン製剤にも近年はいろいろ
なものが発売され、作用時間の異なるものや、それらを配合したもの、また以前のように注射器を用いず、
ペン型の注射器で針の交換とダイアルをあわせるだけの簡便化されたものもあります。また体内に埋め
込んだタイプも考案され、実用化に近づきつつあります。

糖尿病の薬は、血糖コントロールのお薬であって、糖尿病そのものをなおすものではありません。
「もうこれくらいで止めても良いだろう」とか「たくさん服用したら良く効くだろう」などと決して思わないで
下さい。


シーク教徒は何を食べるか

どんな薬も目的があって使用しているわけです。そして合併症のページでもお話しいたしましたが、
低血糖を生じる可能性も生じます。自分が処方された薬の名前、その作用と使用の目的、そして主な
副作用は、必ず覚えておいて下さい。おそらく医師か薬剤師から説明を受けると思いますが、納得して
服用して下さい。

あてにならない血糖値

さて、なにはともあれ糖尿病の治療として、血糖値をコントロールしなくてはなりません。そんな時、何を
指標に良いとか悪いとか判断したらよいのでしょうか?
「血糖値のコントロールだから血糖に決まっている!」と思う人が多いでしょう。しかし、この血糖値くらい
フラフラと変動するものはないのです。例えば、一度目の採血の後、少々腹が立つ出来事があったとしま
しょう。もうこれだけで血糖値は多少上昇するのです。空腹時血糖は指標となりますが、これとて前日の
夕食に食べた内容や、その週の運動状態、また病院まで来るまでに起こった様々な出来事によっても
血糖値は変化するのです。

よく外来で、血糖値の結果をみて喜んだり悲しんだりされます。「今日は、143mg/dlか、前回は150mg/dl
だったから少し下がったな!」とか「あれっ!前の時より10mg/dlも血糖が上がっている。おかしいな何も
食べてないのに・・」などと言った具合です。おわかりですね。これはまったく意味のないことなのです。
ましてや随時血糖(空腹でなく食後の血糖)では、比べること自体が無意味なことなのです。

では、なにを指標にしたらよいのでしょうか?いろいろありますが、現在最もよく利用されている
グリコHbA1cについて説明いたします。

月に一回のお楽しみ検査

グリコHbA1cは、現在保険診療上月に一回の測定が認められています。これは、その検査が持つ意味
から来ているのですが、この検査は、およそ一ヶ月(実際には30日〜50日位)の間の血糖値の平均値に
比例しているのです。言葉を変えて言うと、約一カ月の平均血糖値が推測できるのです。血糖値は瞬時
ごとに変動していますから、ある一点の値で比較評価する事が無意味なことは前項でお話ししました。
それに対してグリコHbA1cは、そう言った血糖の秒ごとの変化、分ごとの変化、時間ごとの変化、日毎の
変化、そして月の変化を全部まとめ、これを平均した値と比例しているのです。つまりおよその平均血糖値
がわかるのです。

この正常値は、およそ5.8%以下です。(単位は%)糖尿病のコントロール状態によって目標は異なりますが、
おおむね7%以下に乗せることが良好なコントロールと言えるでしょう。もちろん6%以下ならなお良いです。
では、8.0%前後はどうなのでしょう?糖尿病の治療の目的は、血糖値を良好にコントロールして、恐ろしい
合併症の予防です。この合併症とグリコHbA1cの値との関係を調べた研究があります。だいたい7%後半
から8%前半くらいあたりから合併症の頻度が急激に増加し始めます。したがって我々は7%台になるよう
指導しますが、指標であることを忘れないで下さい。10%の人が8%になったのであれば、がんばった結果の
良好なコントロールと評価してよいでしょう。しかし当初は7%を切ることもあった人が8%以上になってきて
いたら要注意と言えます。

グリコHbA1cは、がんばっている糖尿病患者さんにとって、どれだけ良くなったかを知る、月一回の楽しみの
検査・・・となるようにがんばって下さい。

大波賞より小波賞をねらえ

グリコHbA1cは、およそ一ヶ月間の血糖値の平均値であると述べました。しかし次のグラフを見て下さい。

同じ平均値である、AとBがあります。Aは血糖値の変動が激しいくBは、変動が少ない。合併症を予防
すると言った観点からも、これはBのような変動が少ない方が望まれるのです。これは、一日だけでなく
もう少し長い期間でも同じです。つまり、"昨日はがんばった。今日は休みにしていっぱい食べました。
でも明日はまたがんばろうかな・・"と言うコントロールより、毎日がんばり続けている人の方が合併症に
なりにくいのです。

ゴルフなどで大波賞と小波賞がありますが、糖尿病では、小波賞を狙って下さい。

その他にも多くの指標がありますが、まずはこの程度で十分です。

それから、糖尿病の主治医は自分であることを再認識して、こう言った指標となる検査を医師を利用し
て調べてもらい、必ず自分でデータを管理して、自分の糖尿病血糖コントロールの状況を把握
して
おくようにしましょう。それが、やる気を維持させる大切な方法の一つでもあります。

食事の持つ意味

食事をする動作にもいろいろあります。時間がなく、かけ込んで食べる立ち食いそば、カップルで楽しむ
大切なデイナー、一人寂しく食べる弁当、職員食堂でのおきまり定食・・・・ どの食事もカロリーを取って
いることにかわりません。しかし食事というのはカロリーを摂取すると言う本来の目的から、現代では会話
としての場や、楽しむ場として生活の中に定着しています。また誰だって美味しいものを食べたい食欲を
持っています。

そんな時、糖尿病だからと食事を楽しむことを奪われたらどうでしょう?誰だって糖尿病の治療をいやに
なるに決まっています。ですから、私は糖尿病の食事に対して、どんな時も楽しむと言った要素を求めて
いただきたいのです。

しかしだからと言って好きなように食べろと言う意味ではありません。定められたカロリー制限をできる限り
守りつつ、楽しんで欲しいのです。「結局、カロリーを守るんでしょう!!」と言う声が聞こえてきそうです。
確かにカロリーは守ります。しかしカロリーだけに縛られてもらいたくないのです。カロリーを考えつつも、
楽しめるようになって欲しいのです。

ここから、私が知っている食事療法を成功した方々のやり方を参考に提示いたします。あくまでも参考で
あって、これが最善の方法ではありません。個人差があることも考慮して下さい。また栄養学的に薦め
にくい例もありますが、食事を楽しむと言う観点からご覧下さい。


油分を我慢した人

40歳の男性。35歳頃より糖尿病を指摘されるも38歳まで放置。検診で早期に加療と指示され我々の
施設を受診されました。身長170cm、体重76kgで管理職のためほとんど体は動かされていませんでし
た。最初2000カロリー食として、数カ月間いろいろ指導したのですが、なかなかやる気が出なかった
ようです。しかし体重を減らしたいと言う欲求はあったようで、徐々に指導した内容も理解され始めまし
た。この頃空腹時血糖が150mg/dl位、グリコHbA1cは8.8%でした。(グリコHbA1cについてはこちら)
奥様の協力もあり、この人はまず徹底した脂肪分の制限とほぼ毎日30分のウオーキングをされました。
もともと揚げ物や炒めものが好きだったようですが、厳しく制限されたようです。後から計算したのです
が、平均600カロリー/日のカロリーの低減となっていたようです。3カ月後には、体重が70kgまで減って
いました。同時に糖尿病もコントロールが改善し、空腹時血糖は120mg/dl、グリコHbA1cも7.4%まで
改善。それから本格的に糖尿病食のカロリーを考えながら食事療法を行っていますが、現在
グリコHbA1cは7.0%と良好です。

彼の場合、油分を控えることから始めました。簡単そうですが、実際外食では、ほとんどの食事に油が
使われており、フライものや天ぷら類は衣をはがして食べたりして苦労されていました。しかし、自宅での
奥様の協力もさることながら、本人がいつも食事内容を考え、そして選び、我慢しつつ食事をしたことに
よって、食事に対する受動的な態度から積極性が生まれ、「あれを、食べたいから、こうやって料理しよ
う(料理してあるものを注文しよう)」と考えるようになったそうです。この頃には食べる量が減った事にも
体が馴染み、最初はひもじかった胃も十分満足するようになっていたそうです。今は、一週間のメニュー
を奥様とプランして、食べたい一品をメインに他の食事のカロリーを考えているそうです。

時間をかけて食べた人

52歳の男性。既に糖尿病と指摘されて10年。その間積極的な治療は行っていなかったが、軽度の
腎障害が出現した事をきっかけに我々が指導をすることとなりました。
空腹時血糖180mg/dl、グリコHbA1c9.0%。この人は、ある会社の重役さんで、食後の血糖が420mg/dl
と言うこともあった人です。身長164cm、体重72kg。典型的な中年太りスタイルでした。指導し始めてとに
かく食事が早いという点に着目して、他のことは置いておいて、食事をゆっくりすることだけ守ってみては・・?
との意見に同意され、がんばられたようです。彼が言うのに、「最初は口に入れる物を少しにして、それを
最低15回噛むようにした。」とのことでした。しかしこれで見事に血糖コントロールが改善しました。
グリコHbA1cは、なんと8.1%となっていました。体重も徐々に減り、今は67kgとのことで、しかも意識しな
くても、ゆっくり食べるようになったそうです。そして一回の食事で食べる量も自然と減ってきたとのことでした。

食後過血糖というのは、肥満傾向の人に多く認められ、最近は食後過血糖改善剤と言うお薬も使用されて
います。しかしこの人のように、時間をかけてゆっくり食べることが、最も良い改善策なのです。「忙しいの
に・・・」と言われる人がみえますが、実際ゆっくりと言っても40分位です。雑談したり、コーヒーを飲んだり
する時間を考えれば、不可能ではありません。また、ゆっくりとよく噛んで食べると、食事量は確実に減ります。

この人は、糖尿病の食事療法については現在も全く理解できていません。しかしゆっくり食べる事だけは
守り続け、現在も同様の血糖コントロールを維持されています。

ご飯類、お菓子類のみ管理された人

64歳の女性。身長153cm、体重50kg。糖尿病を指摘されたのは最近だが、長い間医者にかかったこと
がなく、詳細は不明。空腹時血糖160mg/dl、グリコHbA1c8.0%でした。この人はとにかく小食なのです。
一回のご飯はお茶碗軽く一膳、おかずは、野菜の煮た物などが多く、計算上摂取カロリーは1400カロリー
位でした。しかし、間食が多く、お菓子類や甘い物と称される物を好んで食べてみえました。そこで、甘い
物とお菓子類、ご飯類をカロリー交換する指示を出しました。つまり、甘い物を食べた場合ご飯類で、その
分のカロリーを減らすのです。しかし、十分な管理は困難でした。栄養士さんに計算してもらうと、なんと
煮付け物などに多量の砂糖やみりんを使用されていたのです。控えるよう指示しましたが、不可能かな?
とも思いました。しかし徐々に効果が現れてきました。本人が言うのには、「煮物は薄口でも美味しくいただ
ける」と言うのです。その後も決められた範囲で甘い物を楽しみながらグリコHbA1cは7.3%と改善しています。

こう言った人は、概して「あまり食べていない」と言われます。しかし調べてみると、間食が多いか、甘味料
やみりんなどの調味料をたくさん使ってみえることが多いようです。そう言った場合、甘い物を控えてと言う
だけでは、不可能です。甘い物はここまで良い、そのかわりこれを止めましょう。と目標を決めることが大切
です。またこの例の人は現在、エリスリトールと言う人工甘味料をじょうずに利用して甘いもの好きの味覚を
満足させているようです。

大切なことは、その人にとって、我慢できることが何なのかを知ることです。逆に我慢できない点をどれだけ
薦めても、実行はできないものです。

いかがでしょうか?参考になりましたか? ここで紹介した例は、実際には必ずしも医学的、栄養学的に良い
とは言えません。しかし、まず始めるにあたって、こう言ったきっかけから始め、徐々にがんばっていただくこと
ができたら、幸いと思います。

☆実際のあなたの指示カロリーや食事指導については、必ず主治医の先生と相談して下さい。



These are our most popular posts:

津村歯科クリニック - 神戸市兵庫区の歯科医院は、津村歯科クリニック ...

... のです。ではどんな食べ物、飲み物がどうして歯をダメにしていくかお気付きでしょうか ? ... しかし大局的に見ると、直接の酸によって歯が溶ける度合い よりは、口の中に残っ た食べ物や飲み物の糖が分解されてむし歯ができる確率のほうが圧倒的に多いです。 read more

どうすればいいの?

何度も述べたことですが、糖尿病の治療の本当の目的は、その恐ろしい合併症を防ぐ ことにあります。 ... 栄養士さんのページで取り上げられると思いますが、避けるべき 食べ物や飲み物はありますが、決して口にしてはいけない食べ物は ... 状態把握のため に月に一回は受診して検査をしてもらうぞ! ... 糖尿病すなわち耐糖能に異常のある人 は、インスリンの分泌不全か、量の不足か、作用不全であると言いました。 .... しかし およそ中年以降の方であれば脈拍が120~130回/分になるような運動と考えれば 良いでしょう。 read more

糖尿病の食事 | 食事療法のすすめ方 | 東京都病院経営本部

東京都病院経営本部 Office of Metropolitan Hospital Management 私たちは安全と 信頼の医療を実現する都立病院改革に取り組んでいます ... 糖尿病の治療の目的は、 できるだけ血糖を正常に近い状態に保ち、合併症を防いで健康な人と同様な日常生活を 送ることにあります。治療には、食事 ... どの食べ物がよい、悪いということよりも、一日3 食規則正しくバランスのよい食事をとり、それを長く続けるということが重要です。 ... 血糖 値を安定させるためには、食事の時間と量をできるだけ毎日一定にすることが大切です。 read more

糖尿病を防ぐ食品 - 健康生活.

12~18年間女性16万人を追跡調査したところ、全粒穀物を多く摂取していた人は 少ない人に比べ35%も糖尿病の危険性が低いこと ... 全粒穀物は食物繊維やミネラル 、ビタミンなどの成分がそのまま残っているので糖尿病を予防する食品として効果があっ たものと ... 手軽にシナモンを摂取する方法は、粉末シナモンを紅茶やコーヒーなどの 飲み物に入れてことです。1日あたりティースプーン2 ... このような効果はタマネギに 含まれる辛味成分のイオウ化合物がインスリンの働きを活発にし、糖の消費量が増える ためと考え ... read more

Related Posts



0 コメント:

コメントを投稿